議会活動

録画ビデオはこちら ※外部リンクに移動します。


1 周産期医療体制の危機とネットワーク整備について
2 府庁保育ルームの現状評価と今後の活用・機能強化に
  向けた取組について
3 大阪・関西万博閉幕後の京都府に残るレガシーについて
4 防災・減災教育の強化と次世代の防災リーダー育成に
  ついて
5 その他


議事録全文

◯田中志歩君

◯議長(荒巻隆三君) 休憩前に引き続き会議を行います。
 次に、田中志歩議員に発言を許可いたします。田中志歩議員。
   〔田中志歩君登壇〕(拍手)

◯田中志歩君 国民民主党・日本維新の会京都府議会議員団の田中志歩でございます。会派を代表して、西脇知事並びに理事者の皆様に質問をさせていただきます。令和8年度の予算編成方針が示された中、京都府が掲げてきた「子育て環境日本一推進戦略」における切れ目ない支援を改めて意識しつつ、制度の先にいる一人一人の当事者の姿を思い浮かべながら質疑をさせていただきますので、どうぞ積極的な御答弁をよろしくお願いいたします。
 京都府では、妊娠、出産、子育て、さらには働く環境の改善に至るまで、幅広い施策が展開されてまいりました。これらの施策は、一つ一つが命を守り、命をつなぐために欠かすことのできない取組です。府政の一丁目一番地として、あらゆるライフステージにおける支援に真摯に取り組んでこられたことにまず敬意を表します。
 その一方で、制度は、「あること」が目的ではなく、「必要とする人に届くこと」こそが本質です。そうした思いから、私はこれまで様々な機会を通して子育てに関する質疑を積み重ねてまいりました。
 現代の子育てを取り巻く課題は複雑化し、多様化しています。出生数が減少する一方で、人工妊娠中絶は横ばい。妊娠・出産への不安、キャリアとの両立への葛藤から不妊治療に進む方、男性の産後鬱リスク、さらにLGBTQ+、婦人科疾患・更年期など、今や育児に関する支援だけでは解決できず、心や体のケア、社会とのつながり、地域の理解が求められる時代になっています。
 そして今回は、その中でも特に深刻で、しかも見えにくい課題を抱えている周産期支援体制について伺います。
 周産期医療においては、分娩取扱いの中止や産科医療施設の閉業が相次いでいます。京都市内においても、今年、左京区の日本バプテスト病院が分娩を取りやめ、多くの方から「どこで産めばよいのか」という不安の声が寄せられました。しかし、これは一時的な事象ではなく、長年続いてきた産科施設の縮小傾向がいよいよ表面化したものです。京都市内だけを見ても、2020年には下京区の福岡医院が閉院、2023年には右京区の宮元産婦人科医院が閉院、左京区の森産婦人科医院は分娩取扱中止、2024年には下京区の種田(おいだ)産婦人科が閉院、2025年には同じく下京区の南部産婦人科においても分娩取扱いが中止され、さらにバプテスト病院の分娩受入停止が重なっています。分娩を担う施設が連続して姿を消しており、京都市内においても周産期医療体制の受皿が急速に失われていることを示す、極めて危機的な状況です。
 京都府は南北で医療資源の偏在があることが従来から指摘をされてきましたが、周産期医療の縮小はもはや府全域で同時に進んでおり、「地元で安心して産める」という前提そのものが揺らいでいます。
 府内には、周産期母子医療センターを含む分娩取扱施設が存在し、その中核として京都第一赤十字病院、京都府立医科大学附属病院、京都大学医学部附属病院が総合周産期母子医療センターとしてハイリスク分娩の受入れを担っていただいています。一方で、リスクの低い妊婦さんについては民間の産科医療機関がかかりつけとなり、大規模病院でも年間1,500件程度、多くのクリニックは年間200から300件といった分娩件数で地域の出産を支えてきました。
 しかし、近年、分娩件数が全国的に大きく減少し、産科医、小児科医、助産師をはじめとする多職種の人材確保が困難になり、さらにNICU(新生児集中治療室)の維持が最大の課題となっています。
 NICUは、産科だけでは維持ができず、小児科医の人員、専門看護師、助産師など、複数職種の確保が前提となります。小児科医不足によりNICUが維持できないという状況が生じていると同時に、分娩件数が減ることで、もともとNICUの維持に大きな費用がかかる部分を分娩で補っていた構造が成り立たなくなり、京都市内においても次々に閉院が生じています。
 この悪循環が多くの地域で既に現実となっております。これは京都市内だけの問題ではなく、今後も続く京都府全体の周産期医療の先駆け的前兆であると、私は強い危機感を持っております。
 京都府は南北に長く、南部と北部、中山間地域では、周産期施設への通院や、もしものときの搬送距離など、交通事情も大きく異なります。こうした環境の中で府民がどこに住んでいても安心して出産に臨めるようにするためには、医療機関同士が機能を補完し合い、広域で支え合うネットワーク形成が欠かせません。今後、分娩を担う医療機関がさらに減ることが確実視される中で、これまで以上に強固な連携体制を構築していくことは不可欠です。
 令和4年度から府では地域周産期母子医療センターや総合周産期母子医療センターを核とした連携基盤の整備が進められてきました。国の医療計画とも歩調を合わせつつ、中核病院を中心とした広域ネットワーク、地域の産科医院・助産院を含めた役割分担、ICTを活用した情報共有、医療DXを生かした遠隔支援といった、府域全体を一つの周産期体制として機能させる仕組みが段階的に整備されてきたと承知をしております。
 そこで伺います。
 令和4年度から進めてこられた周産期ネットワーク整備について、これまでの取組の進捗状況と得られた成果について知事の御所見をお伺いします。
 次に、周産期医療ネットワークが実際に運用される中で見えてきた課題と展望について伺います。
 周産期母子医療センターの運用が進むにつれて、現場の実情がより鮮明に見えるようになってきたものと考えております。特に近年、高齢妊娠や基礎疾患を抱える妊婦の増加により、より高度で継続的な管理が必要となるケースが確実に増えています。NICU・MFICU(母体・胎児集中治療室)の逼迫や救急搬送の調整難、さらには医師の働き方改革の本格化など、従来以上に府域全体で支え合う周産期体制が求められる状況です。とりわけ北部医療圏のように距離や季節的制約といった地理的ハンディを抱える地域では、搬送の調整、初期対応の負担、専門医へのアクセスなど、ネットワークを動かしたからこそ明らかになった課題もあるのではないでしょうか。
 また、ICTを活用した連携が持つ実効性についての評価も運用段階で注目すべき視点です。
 医療DXの進展は、周産期ネットワークにおいて大きな力を発揮しています。病院間で電子カルテを共有し、同じ画面を見ながら患者情報を確認できる体制が構築されていると伺っております。ほかにも、採血結果や胎児エコー画像を共有し、地理的に離れた場所からでも専門医が判断を加えられることは京都府内の限られた専門人材を効果的につなぎ、地域間格差の緩和に大きく寄与する取組であり、府民の安心にも直結すると評価をしております。
 一方で、府内の電子カルテ普及率は100%ではなく、未導入の医療機関では、画像の共有は可能であっても、電子カルテに記載される詳細な医療情報は口頭でのやり取りに頼らざるを得ない部分が残ると聞いております。こうした地域では情報共有にかかる時間や手間が増え、ネットワークが持つ本来の強みを生かし切れていない可能性があると考えております。
 電子カルテの導入は民間医療機関の判断であり、導入費用も全て病院が負担するため、経済的理由から導入が進みにくいことも理解をしております。しかし、医療人材の不足が深刻化する中、電子カルテの有無は若手医師や助産師の就職先として選ばれる要素の一つにもなりつつあると感じております。
 こうした背景を踏まえると、京都府が進める周産期ネットワークをより強固なものとするためには、電子カルテ導入の有無による連携格差をどう埋めていくかも今後の大きな論点となるのではないでしょうか。国では2030年までに電子カルテ100%普及を目指す議論が進められており、医療DXは今後ますます加速することが見込まれます。京都府においても、国の動向を注視しながら、医療現場の省力化やネットワークの質向上に向けて、可能な範囲で導入促進を後押ししていただきたいと考えております。
 周産期ネットワークは、必要な情報が正確に、そして迅速に共有され、専門医の指示が現場に届くことで初めて妊婦さんと赤ちゃんの安心につながる体制になると考えております。その意味で、ネットワークを実際に動かしてみて初めて見えてきた課題こそが今後の改善に直結する最も重要な材料であり、府として丁寧に拾い上げていく必要があると感じております。
 そこで伺います。
 周産期ネットワークの運用を通じて見えてきた課題、そして今後どのように改善を重ね、体制の質をさらに高めていかれるのか、知事の御所見を伺います。
 そして、周産期分野における最後の質問に移ります。
 皆さんは、産婦、産後のお母さんの死因の第1位が「自死」であることを御存じでしょうか。医療技術の進歩により、日本では世界でも有数の「赤ちゃんが安全に産まれる国」になりました。しかし、その一方で、医療につながる手前の段階で、心の不調や社会的孤立、生活環境の困難によって救えるはずの命が失われています。これは現代の周産期支援が抱える大きな矛盾であり、見過ごしてはならない課題です。
 かつて助産師は「産婆」と呼ばれ、地域に根差しながら、妊娠、出産、産後まで家族に寄り添っていました。しかし、戦後、出産は病院へと集約され、助産師の働く場も家庭から医療機関へと移りました。医療の高度化は母子の命を守る上で大きな成果をもたらしましたが、その裏側で生活と出産が切り離され、妊婦に継続的に伴走する存在が地域から離れていったことも否めません。
 近年では、少子化による産科医師不足を背景に、全国的に周産期医療は集約化が進んでいます。京都府においても、二次医療圏を越えた広域的な医療連携、総合周産期医療センターを中心とした受入れ体制の整備など、ハイリスク妊婦を支える高度医療の充実が図られてきました。その結果、救命率の改善など、確かな成果が生まれています。一方で、医療体制の充実と引換えに、地元を離れ、初めての場所で初めて会う医療チームに身を委ねながら出産を迎える妊婦さんも増えています。医療的には安全であっても、精神的には大きな不安や孤独を抱えている実態があります。
 国際的な議論では、出産は、「体の安全」だけでなく、「心理的安全」、尊厳あるケアを含めた支援が必要であるという考え方が主流となっています。求められているのは妊娠期から産後までの継続的な伴走であり、出産を医学的なイベントではなく、人生の大きな転機として支えるという視点です。京都府においても、医療体制の充実と同時に、妊婦がどんな気持ちで出産を迎えるのか、どのような体験として出産を受け止めるのかという出産体験の質にしっかりと光を当てる必要があると考えます。
 出産時の孤立や恐怖は、産後鬱や育児不安、次の妊娠への意欲低下につながることが研究でも示されています。一方、「尊重された」「希望を聞いてもらえた」「寄り添ってくれた」という体験は母親の自己肯定感を強く高め、子育てのスタートを大きく後押しします。この役割を最も発揮できるのが助産師であり、助産師が主体となって妊娠、出産、産後まで継続的に関われる環境づくりが何より重要です。
 京都府内では、病院の中に助産師主体の出産を可能とする「院内助産」が4つの医療機関で運営されています。これは、「医学的安全」と「自分らしい出産」の両立を図る重要な取組です。しかし、全国的な課題と同様、京都府においても、助産師の不足などを理由に、「院内助産」のさらなる整備が進みにくい現状があります。
 国の財政支援制度として、地域医療介護総合確保基金を活用し、「院内助産」や助産師外来を開設する際の改修費や備品整備を支援する制度があります。しかし、京都府では、助産師確保の困難さから、このメニューを活用できていないと承知しております。ただ、先ほど申し上げたように、「心理的安全」「継続ケア」「尊重される出産」は、今後の出産環境を考える上で欠かすことのできない視点です。国の制度による後押しがあるにもかかわらず、現場の体制が整わないために必要な選択肢が失われるのは妊婦さんにとっても地域にとっても大きな損失です。
 そこで伺います。
 医療的安全に加えて、妊婦さんが尊重され、安心して出産に向き合える心理的安全性と継続的な助産師ケアを京都府の周産期施策として今後どのように確保し、強化していかれるのか、知事の具体的な御所見を伺います。
 次に、働きやすい職場環境づくりや来庁者への支援として府庁に設置されております保育ルームについて伺います。
 府では、「京都府子育て環境日本一推進戦略」の一環として、令和2年度に「京都府庁保育ルーム」を整備していただきました。子育て世代が府庁へ来られる際の支援制度として、また職員の働きやすさを支える環境をつくるという府の思いが形になった、大変温かい取組であると受け止めております。
 保育ルームは、京都府内産の木材をふんだんに使用し、木の香りとぬくもりを感じられる空間で、まさに優しさの詰まった場所となっており、子育て中のお母さんを連れて見学に行った際は、皆さんからコンセプトや環境について非常に好評をいただきました。
 私自身も子どもがまだ保育園に長時間預けることができなかった時期に3度ほど利用させていただきました。いずれも本会議の際でしたが、当時生後6か月の子どもを保育士さんに預け、本会議の終了後に迎えに行き、一緒に帰る。とりわけ17時前まで本会議がある日に利用させていただきましたが、この保育ルームがなければ本会議に出席できなかった日もあったと思います。大変ありがたく利用させていただきました。
 当時、議会事務局の方から、「議員による利用は初めて」と伺いました。本来は府庁への来庁者や府の職員さんが利用されることを想定されていたかと思いますが、当時の私の事情にも丁寧に寄り添い、快く受け入れていただきました。
 そして、保育ルームを利用したことで今も心に残っている出来事があります。ある雨の日、傘が差せないまま子どもを抱っこして車に乗り込もうとしていた際、近くにいた職員の皆様が私と子どもに傘をそっと差してくださいました。「職場に子どもを連れてきて迷惑ではないだろうか」「場違いに思われないだろうか」と、そんな不安を抱えていた私にとって、あの傘の一瞬は、府庁にはWEラブ赤ちゃんプロジェクトの精神が確かに息づいているのだと実感できる出来事でもございました。
 こうした経験からも、府庁に保育ルームがあること自体が府の温かい施策を後押しし、府庁と子育て世代をつなぐシンボルにもなっていると感じています。ぜひ府民の皆様にもこの保育ルームの存在を知っていただき、必要なときには遠慮なく利用していただきたいと願っております。
 一方で、利用状況をお聞きしますと、令和2年度に設置され、4年半が経過する中で、これまでの累計利用人数が67名と伺っております。今年度で言えば、来庁者4名、職員8名という状況です。この利用人数についてお聞きしたとき、率直に申しまして、私は少ない印象を受けました。せっかくすてきな空間を整えていただいたからこそ、「もっと活用できる可能性があるのではないか」と、惜しい気持ちを抱いているところでございます。
 もちろん、利用者数を増やすこと自体が目的ではありません。ただ、これまでの累計が67名ということは、平均すると、月に1人程度の利用であります。府庁内の重要フロアの22平方メートルがほとんどの日に使用されていない状況であるとすれば、いま一度現状を振り返り、よりよい形へ育てるタイミングではないかと考えます。
 近年、社会全体では、テレワークやフレックスタイム、男性育休の取得拡大、副業・兼業など、働き方は大きく変化しています。企業内保育所や病児保育、企業主導型保育、一時預かりといった「職場と子育てをつなぐ仕組み」も多様化しています。
 一方で、行政が設置する保育ルームには、財源や人員配置、消防法などの安全基準といった制約もあり、常設保育所のように全てのニーズを受け止めることはできません。その意味で、行政の保育ルームにはそもそも一定の役割の限界があることも現実としては理解をしております。しかしながら、現状のままではあまりにももったいないと感じます。限界があるからやめてしまうのではなく、限られた役割の中でどうすれば必要な人にとって本当に頼れる場所になるのかを考えることこそがこれからの行政に求められる視点だと思います。特に、子どもを預ける選択肢が十分ではない独り親家庭や非正規雇用で働く保護者、親のサポートを得にくい核家族世帯にとっては、数時間だけ安全な場所で子どもを見てもらえる場所があるかどうかは、仕事を続けられるか、安心して来庁できるかに直結します。府庁の保育ルームは、全てのニーズを一手に引き受ける場所ではなくても、「ここに来れば何とかなるかもしれない」と思えるセーフティーネットの一つになり得ると感じております。
 そこで伺います。
 まず、令和2年度に創設された当初、どのような目的や思いを持って設置をされたのか、お聞かせください。また、これまでの運用を通して、現在の利用状況についてどのような成果や効果があったと受け止めておられるのか、府としての評価を伺います。
 まずはここまでの御答弁をよろしくお願いいたします。

◯知事(西脇隆俊君)

◯議長(荒巻隆三君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 田中志歩議員の御質問にお答えいたします。
 周産期ネットワークの整備状況と成果についてでございます。
 周産期医療につきましては、少子化に伴う分娩数の減少や晩婚化・晩産化に伴うハイリスクの妊産婦の増加などに対応し、府内のどの地域でも安心・安全に出産できる体制を整えることが重要だと考えております。
 今後、生産年齢人口の減少により、医療従事者の確保が一層の課題となることを踏まえますと、こうした体制の整備に当たりましては「ハイリスク分娩や通常分娩を担う医療機関の役割分担を進め、医療資源を有効に活用すること」「地域性も考慮しながら診療機能を一定集約し、安全性を確保すること」「医療機関の連携を強化し、円滑な受入れ体制を整備すること」が重要だと考えております。そのため、京都府におきましては、「周産期母子医療センターを中心とした医療体制の構築と医療機関の役割分担の推進」「分娩の継続が難しい医療機関が、分娩に代わり、妊婦健診などを実施し、他の分娩取扱医療機関の負担を軽減することへの支援」「総合周産期母子医療センターによる受入れ調整など、医療機関の連携強化」などの取組を実施しているところでございます。
 このうち、特に、デジタル技術を活用して医療機関の連携をさらに強化し、府内のどの地域でも質の高い医療を提供するため、令和4年度からICTを用いた「周産期医療ネットワーク基盤整備事業」を開始したところでございます。本事業は、母体や新生児に高度な医療を提供する周産期母子医療センター等の医師が、分娩監視装置や電子カルテなどのICTを活用し、分娩を行う地域の病院等に入院している妊産婦の状態をリアルタイムに把握しながら診療支援を行うためのネットワークの整備を支援するものでございます。
 ネットワーク整備の進捗状況につきましては、令和6年度までに、京都市内の総合周産期母子医療センターや、北中部地域・山城地域の分娩取扱医療機関など、28医療機関でネットワークが導入され、今年度も京都・乙訓医療圏の6医療機関での導入を予定しております。これにより、ネットワークの導入を希望する全ての分娩取扱医療機関での導入が完了し、導入医療機関が取り扱う分娩数は府内全体における分娩数の約75%を占めるようになる予定でございます。
 また、ネットワーク整備の成果についてでございますが、令和6年の診療支援の依頼件数は84件となっております。ネットワークを活用した診療支援により、例えば、地域の分娩取扱病院に派遣されている若手医師が総合周産期母子医療センターの医師とリアルタイムで相談することで、腹痛で入院していた妊産婦が、出産前に胎盤が子宮から剥がれる「常位胎盤早期剥離」という状態であると判明し、院内において緊急帝王切開で出産することになった事例が報告されており、妊産婦の正確な診断と適切な治療に一定の成果が出ていると考えております。
 また、こうした診療時における成果に加えまして、総合周産期母子医療センターの医師と北部の分娩取扱病院に勤務する若手医師が定期的に症例検討会を行うことにより、周産期医療の安全性が高まっただけでなく、若手医師の心理的なサポートや教育面におきましても有益であったと伺っているところでございます。
 次に、周産期ネットワークの課題と今後の取組についてでございます。
 周産期ネットワークにつきましては、導入済みの28医療機関のうち、令和6年にネットワークを活用して診療支援を依頼した医療機関が11施設であるなど、導入後の活用が一部の医療機関にとどまっている点が課題となっております。この要因といたしましては、ネットワークを導入した医療機関の医師が機器の操作に慣れていないことや、妊産婦に危険が生じた際はネットワークで画像などを共有しながらの相談よりも、従前からの慣れた手法である電話相談のほうが活用されやすいことなどが背景にあると伺っております。
 こうした課題に対応するため、今年度中にネットワークを導入した全ての医療機関を対象に、事例検討会を開催し、機器の使用方法や優良事例の紹介を予定しているところでございます。
 引き続き、周産期母子医療センターや医療関係団体と京都府で構成する「京都府周産期医療協議会」におきまして、ネットワークの活用に際しての運用状況や課題を把握いたしますとともに、事例検討会の開催などを通じて医療機関の連携体制構築を支援し、周産期医療の質の向上を図ってまいりたいと考えております。
 次に、妊産婦の心理的安全性と継続的な助産師ケアについてでございます。
 核家族化や地域のつながりの希薄化が進み、妊娠・出産に伴う不安や孤立感を抱く妊産婦がおられる中で、全ての妊産婦が尊重され、安心して出産に向き合える環境を整えることは重要だと認識しております。
 妊産婦の心理的安全性を確保し、不安なく妊娠・出産期を過ごしていただくためには、妊娠期から産後に至るまで妊産婦に寄り添い、母子の健康を一貫してサポートする助産師の役割が重要であり、助産師が妊産婦に対しまして継続的なケアを提供することで妊産婦や家族との信頼関係が構築され、妊産婦の安心感や満足感につながるものと考えております。そのため、分娩取扱医療機関におきましては、助産師が妊産婦や家族の意向を尊重しながら、妊娠から産後までのケアを提供する「院内助産」や、助産師が外来で健康診査や生活指導などを実施する助産師外来などの取組が行われているところでございます。
 府内の「院内助産」は4医療機関、助産師外来は27医療機関で実施されておりますが、日本看護協会の調査によりますと、医療機関が「院内助産」や助産師外来を実施していない理由として助産師の確保が困難であることが挙げられており、実施する医療機関をさらに増やすためには助産師の確保が重要であると考えております。そのため、京都府におきましては、継続的に助産師を確保し、妊産婦を支えられるよう、府内で助産師を養成している専門学校の運営を支援いたしますとともに、助産師が職場に定着しやすい環境を整備するため、新人助産師の離職防止や資質向上を目的とした研修会を実施しているところでございます。
 このほか、子育てなどの理由で一旦離職した潜在助産師に円滑に現場復帰していただくため、再就業に対する不安を軽減するための就労相談や知識・技術を習得するための講習会を実施し、助産師の確保に取り組んでいるところでございます。
 引き続き、医療機関や養成校の御意見を伺いながら助産師の確保につきまして取組を進めますとともに、「京都府周産期医療協議会」において妊産婦を支える環境づくりについて検討してまいりたいと考えております。
 今後とも、周産期医療体制の充実を図り、府民の皆様が府内のどの地域でも安心・安全に出産できる体制の構築に努めてまいりたいと考えております。
 次に、京都府庁に設置されております保育ルームについてでございます。
 京都府におきましては、「子育て環境日本一推進戦略」に基づき、子育て世代が孤立せず、社会から温かく見守られていると感じる社会を目指し、子育て世代をはじめ、全ての人にとって暮らしやすい京都の実現に取り組んでいるところでございます。
 保育ルームにつきましては、平成14年度から、子育て中の乳幼児の保護者が積極的に諸行事に参加し、その能力を十分発揮できるよう、京都府が主催・実施する講演会、各種試験、その他行催事ごとに保育士を派遣する「保育ルーム設置促進事業」を実施し、令和6年度までの23年間で年平均約220件、約850名のお子さんをお預かりし、乳幼児を持つ保護者の社会参画を促進してきたところでございます。
 こうした中で、令和2年度には、「子育て環境日本一」の実現に向け、「保育ルーム設置促進事業」の新たな展開として「京都府庁保育ルーム」を京都府庁内に設置をいたしました。この取組は、京都府が率先して子どもや子育て中の方が利用しやすい施設となることで府内の様々な主体の取組を牽引することを目的とし、京都府が主催・実施する事業への参加者や各種免許の申請手続等で来庁される方を対象としたものでございます。
 この「京都府庁保育ルーム」には、お子さんに伸び伸びと過ごしていただけるよう、府内産木材を使用して、ぬくもりのある空間づくりを実現いたしますとともに、安心してお子さんを預けていただけるよう、一般社団法人京都府保育協会の協力を得て、ベテランの保育士による保育を実施しているところでございます。「京都府庁保育ルーム」を利用いただいた来庁者からは「子どもがとても楽しかったと喜んでいたので、それ以降も京都府庁に用事があるたびに利用している」「子どもを安心して見ていただける環境があるため、相談などに集中できる」といった御意見をいただいているところであり、子どもや子育て中の方が利用しやすい施設づくりに一定の効果があったと考えております。
 さらに、令和3年度からは、「出産や子育てしやすい京都府庁に向けた職場風土づくり」を進める取組の一つとして、京都府職員向けに「子連れ出勤制度」を実施しているところでございます。この制度は、子育て中の職員が、お盆や年度末、年度初めなど、保育園や幼稚園が休園となる日にどうしても出勤する必要がある場合や、育児休業中の職員が円滑な職場復帰に向けた面談のために職場を訪れる場合など、一時的に子どもを京都府庁に預けられるようにしているものでございます。職員の子連れ出勤の利用につきましては、制度創設当初から想定しておりますように、保育園の休園日などに利用しているケースが多く、職員がどうしても出勤しないといけない際のセーフティーネットとして一定の役割を果たしているものと考えております。

◯田中志歩君

◯議長(荒巻隆三君) 田中志歩議員。
   〔田中志歩君登壇〕井原正裕君登壇〕

◯田中志歩君 御答弁いただきまして、ありがとうございました。
 まず、周産期医療ネットワークの件についてですが、ネットワークの構築により、腹痛で来られた妊婦さんが「常位胎盤早期剥離」の前兆であるということが分かり、そういった危機的な状況においても、ネットワークがあったからこそ、胎児、そして母体にも影響なく出産につながったと。大変機能がなされた事例だというふうに受け止めました。
 出産は、女性にとって人生の転機とも言える大きなイベントでございます。心穏やかに自分らしい出産に臨めることで、子どもへの愛着形成や、また産みたいと心から思える体験となります。そのためには、おっしゃっていただいたように、府内のどこにいても安心して自分らしい出産ができるように、そして産後も含めて引き続き周産期医療の体制整備に御尽力いただくようによろしくお願いを申し上げます。
 また、協議会も発足されるということではございましたが、冒頭にも申し上げましたが、分娩件数は減少をしている一方で、未受診妊婦やハイリスク妊婦の件数は増加しております。つい先日も現場の助産師さんから、夜勤明けで勤めていた後に未受診の妊婦さんが来られて、やはり人手が必要だから、その後も残って対応しなければいけなかったというような現場の状況もお聞きしているところでございますので、ぜひそういった協議会の場にも現場の医療従事者の皆様のお声もしっかりと丁寧に拾い上げていただきますようにお願いを申し上げます。
 そして、保育ルームについてでございます。今お答えいただいた中で1つ提案もさせていただきたいなと思っております。
 この保育ルームを今は府庁内の一角にある保育スペースとして活用されていますが、もう一歩踏み込んで、新たな価値を持つ拠点として育てていく可能性もあると考えております。これは質問ではございませんが、例えばネーミングライツを導入し、この保育ルームに名前をつける。それによって子育て支援に理解のある企業や地域団体と連携し、協賛・協力の枠を広げていくことも可能になるのではないかと思っています。名前を持つことで府民にとっても分かりやすく親しまれる場所になり、企業としても子育て支援に参画しやすくなるのではないでしょうか。加えて、「子育て環境日本一」を掲げる京都府の取組に共感してくださる企業から、保育士の派遣や短時間保育サービスとの連携、備品や物品の提供、ICTツールの導入支援など、多様な協力を得られる可能性も広がります。
 行政の保育ルームには予算・人員・制度面の限界がある一方で、だからこそ行政の枠を超えた連携に踏み込むことで広がる可能性があると私は感じています。せっかく府が大切に整備をしてくださったこの空間を使われないままの施設にしないためにも、企業、地域、府民と一緒に育てていくアプローチは時代に合った選択ではないでしょうか。
 ここで私見としてですが、府議会議員の皆様の中にも小さなお子さんを育てながら議会活動をされている方も多くいらっしゃいます。移動距離の問題もあり、府庁に連れてくること自体が難しいという根本的な課題はありますが、例えば議会の傍聴の際や府庁来庁時など、そして子育て中の方々の政治参画にとっても未来のある施設だと思いますので、ぜひ機能や制度の柔軟化について今後も御検討いただきますようにお願い申し上げて、次の質問に移ります。
 次に、大阪・関西万博閉幕後の本府に残るレガシーについて質問をいたします。
 大阪・関西万博は、4月13日の開幕から184日間で一般来場者として2,557万8,986人が来場し、10月13日に閉幕いたしました。成熟社会において開催されたこの祭典は、人工知能をはじめとする最新技術と人類が共存する未来像を描きつつ、国境や立場を超えて交流することの価値を再認識させる場となったと評価されています。
 当初はパビリオン建設の遅れや採算性への懸念も報じられ、開幕直後の来場者数は10万人を下回る日もありました。しかし、5月のゴールデンウィーク頃からSNSや口コミを通じて人気が広がり、会場の雰囲気は大きく変容しました。特に9月12日以降は連日20万人を超える盛況が続き、閉幕に向けて熱狂は一層高まりました。閉幕日においても20万人以上が訪れ、日本の万博史上最多となる158か国・地域が参加した本万博は、最後まで大きな熱気に包まれたまま幕を下ろしました。
 2022年に「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマが掲げられてからの数年間には、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザでの紛争など、世界が分断の危機に直面する局面が続きました。そうした背景の下、構想されたのが会場の象徴となった大屋根リングです。158か国・地域が大屋根リングの下に集い、多様性の中にある、つながりの価値を来場者に提示しました。
 私自身も3度会場を訪れ、大屋根リングの上から会場を俯瞰すると、各国・地域のパビリオンが集積する地球の縮図を一望することができました。「多様でありながら、ひとつ」という理念の下、設計された空間は、建物の高さや外観によって国力を誇示するものではなく、各国が独自の文化や技術を競いながらも同じ地平に立って共存する、そのメッセージが空間全体を通じて伝わってくるものでした。
 京都、滋賀など、9府県が共同出展した関西パビリオンには、会期を通じて148万人が来場されたと承知しています。1日当たり4,500人が限界という受入れ規模でもあり、なかなか予約が取れないパビリオンとして大きな話題となりました。最終日には、西脇知事をはじめ、5府県の知事が駆けつけ、記念式典が行われたことは地域の連携を象徴する場面でもありました。
 館内では京都府広報キャラクター「まゆまろ」のスタンプが設置され、万博スタンプラリーを通じて、子どもから大人まで大変な人気を博したと伺っています。ミャクミャクが爆発的な人気を得たことも追い風となり、京都独自のスタンプが象徴的コンテンツとなって多くの来場者が笑顔で押印されていったと聞いております。
 また、JR京都駅前に設置された京都の魅力発信拠点「EKIspot(エキスポ) KYOTO」には延べ10万人以上が来訪されました。こちらでも関西パビリオンと同様にスタンプ企画が実施され、京都と万博をつなぐ効果的なかけ橋として京都への親しみや文化的な魅力を感じていただく大きな契機となったのではないでしょうか。
 こうした取組を通じて得られた体験は、京都と世界をつなぐ入口として今後の施策にも生かせる貴重な資産であると考えております。
 惜しまれつつ閉幕した万博ですが、現在はレガシーをどう継承するかが注目されております。
 大阪・関西万博の会場を彩った各国のパビリオンや備品は、「持続可能な社会」の理念の下、閉幕後には移設・再利用が進められています。例えば、大屋根リングの一部は能登半島地震で被災した石川県珠洲(すず)市の復興に活用、「2億円トイレ」と呼ばれた施設は大阪府の府立花の文化園へ移設予定、またルクセンブルク館の一部は大阪府交野市の子育て支援施設として再利用予定となっています。
 このようにハードのレガシーが注目されることが多い一方で、万博の価値は建築物や展示物にとどまりません。京都府にとっての本質的なレガシー、それは人の心に刻まれた体験、国際交流で生まれた気づき、価値観の更新といったソフトレガシーではないでしょうか。
 会場では、各国のスタッフと子どもたち、学生や来場者が自然に会話を交わし、異文化に触れ、草の根の国際親善が生まれていました。こうした経験が10年20年と育まれていき、新たなつながりを生み出す種となることを強く期待しています。
 そして、何より京都府にとっての大きなレガシーの一つは、現場を支えた府職員が得た経験ではないでしょうか。京都ゾーンの企画、展示準備、運営に至るまで、多くの困難を抱えながら、府内の学生や中小企業、府職員の皆様が一体となって取り組まれました。そこには、夢洲(ゆめしま)という人工島ならではのアクセス課題、外国人来場者への対応、会場内のトラブル対応、大規模イベントならではの複雑な調整など、常に変化し続ける環境の中で、迅速で的確な判断が求められたと思います。こうした状況の中で、府職員の皆様は、大規模イベントの調整力をはじめ、危機管理からホスピタリティ、接遇力に至るまで、行政運営においても必要なスキルを実践の中で体得をされました。
 また、国際社会が複雑化する中、京都として、文化的・歴史的背景を踏まえ、独自のメッセージを世界に発信されたことは大変意義深いと感じております。
 私自身、万博が相互理解と対話を促す公共財であることを改めて実感するとともに、こうした経験こそ、将来世代に長く根づく財産であり、万博に携わった人材は今後の京都府の未来を担う貴重なレガシーであると確信しております。
 そこで伺います。
 今回の万博参加を通じて、京都府として職員がどのような経験や学びを得たと評価されているのか、まず伺います。併せて、万博で得られた知見を今後どのように府内で共有し、府政全体の力として生かしていかれるのか、府としての方針をお聞かせください。
 万博後もSNSでは万博ロスが広がり、その熱量は今も続いています。京都ゾーンや「EKIspot(エキスポ) KYOTO」のスタンプ企画が大きな反響を呼んだように、今回の万博をきっかけに、京都へ関心を持った方々を府内周遊や分散観光につなげていくことは大きな好機です。文化発信、観光誘客、国際交流、人材育成など、万博で生まれた熱量とネットワークを京都の未来の力へと転化していくことがアフター万博の核心であると考えております。大阪・関西万博で示されたソフトパワーを真のレガシーとして残せるかどうかは、閉幕後の発信と具体的な取組にかかっております。
 つきましては、万博の熱狂や「万博ロス」と呼ばれる閉幕後の関心を踏まえ、府内観光や周遊促進、分散観光へと展開するアフター万博戦略をどのように描いておられるのか、知事のお考えを伺います。
 ここまでの御答弁をよろしくお願いいたします。

◯知事(西脇隆俊君)

◯議長(荒巻隆三君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 今回の大阪・関西万博参加を通じて職員が得た経験や学びと、その活用についてでございます。
 大阪・関西万博につきましては、取組の準備段階から、行政、経済界、関係団体及び有識者で構成される「大阪・関西万博きょうと推進委員会」を立ち上げ、万博会場だけでなく、府内各地におきましても様々な取組をオール京都で推進してきたところでございます。
 万博会場の関西パビリオン京都ゾーンにおきましては、延べ111の企業・団体が出展し、おおむね1週間ごとに展示を入れ替えながら京都の魅力を発信してまいりました。また、京都府内におきましても、11のフラッグシップ・アクションをはじめとする府域への誘客に向けた様々な取組を展開してまいりました。
 10月13日、大阪・関西万博は大盛況の中で幕を閉じられました。この間、京都ゾーンには延べ約47万人もの方にお越しいただきますとともに、府内の取組にも多くの方に参加いただくなど、京都府といたしましても成功裏に閉幕を迎えることができたと考えております。
 これまでの取組を振り返りますと、京都ゾーンにおきましては、出展に向けて府職員が出展者とアイデアを出し合いながら展示内容の磨き上げを行う中で、新たなネットワークが生まれたほか、来場者と直接コミュニケーションを行い、その反応を基に展示内容を改善することで好評価につながるなど、直接声を聞くことの重要性につきましても改めて認識できたと考えております。また、万博開催期間の後半におきましては、機運の盛り上がりによる来場者の増加など、万博に関わる会場内外の状況が日々変わる中、実演や体験回数を増やすなど、臨機応変に事業展開を行い、決められた運営方法などにとらわれない柔軟性とその都度機動的に対応する現場対応力が身についたと考えております。さらに、半年間という長期にわたり、万博会場と府内各地で様々な取組を展開することで、万博を契機として府域の発展につなげるという大きな目標に向かい、職員と府民の皆様や関係者が一緒になって取り組んだこと自体がこれまでにない大きな経験になったものと考えております。
 こうした経験を生かすことで、まずは開催まで1年を切った「全国都市緑化フェアin京都丹波」や「ワールドマスターズゲームズ2027関西」を来場者にとってより魅力的なイベントとして開催することにつなげることができると考えております。
 このほか、多くの職員が現地・現場の声に耳を傾け、多様な主体と連携した経験や学びは、今後、京都府総合計画の推進に向け、あらゆる施策の準備・立案から実施に至るまで幅広く生かせるものと考えております。
 次に、万博ロスを踏まえたアフター万博戦略についてでございます。
 京都府では、関西パビリオン京都ゾーンや京都駅に設置した「EKIspot(エキスポ) KYOTO」におきまして、万博閉幕後も多くの方に府内を訪れていただけるよう、府内各地を巡る季節ごとのモデルコースの提案や府内周遊を促進する特別なイベントの実施などに会期中から取り組んでまいりました。また、閉幕の翌日から「EKIspot(エキスポ) KYOTO」や京都府庁、府内のイベント会場に万博関連スタンプを設置いたしましたところ、スタンプを押印するため、遠くは東北や関東から、これまで1万人を超える方々に京都府を訪れていただいており、閉幕を迎えた後もなお万博の熱気は続いているものと考えております。
 この熱気を府内への誘客につなげるため、京都ゾーンにお越しいただいた方はもとより、お越しいただけなかった方にも京都ゾーンの魅力を体感いただけるよう、今月から、壁面・床面を彩った京瓦タイル「キモノタイル」やアテンダントのユニフォーム、会期を通じた展示を振り返るダイジェスト映像、京都ゾーンの入口を模したフォトパネルなどを京都学・歴彩館や京都府庁におきまして展示しているところでございます。
 さらに、万博の感動と府域の魅力の両方を味わっていただけるアフター万博の取組といたしまして、府内各地で開催されるイベントへのミャクミャクや万博衣装のまゆまろの出演、万博会場でも活用された「残念石」が今も残る場所など、万博関連スポットを巡る周遊企画、万博会場の「いのちの未来」パビリオンで展示され、けいはんなオープンイノベーションセンターに移設されたアンドロイドの一般公開などを実施したいと考えております。
 万博閉幕後も続く盛り上がりを府内への誘客に結びつけますとともに、万博をきっかけに京都のファンになっていただいた方に改めて京都を訪れていただけるよう、今後開催される大型イベントに合わせた周遊企画の実施など、さらなる周遊の促進に取り組んでまいりたいと考えております。

◯田中志歩君

◯議長(荒巻隆三君) 田中志歩議員。
   〔田中志歩君登壇〕

◯田中志歩君 御答弁いただきまして、ありがとうございます。
 関西パビリオンにおいてのスタンプラリーについては、東北や関東から延べ1万人以上の方々にスタンプラリーを楽しんでいただくということで、それを京都府内の周遊にも生かしていただくお取組について大変有意義なものと感じております。
 そして、万博に実際に展示されたものですが、京瓦の一部であったりユニフォーム等が、京都府内の歴彩館であったり、大学のみなさまにおいてもとても身近な場所で展示をされるということで、忙しかったり、ちょっと足が悪かったり、人混みの中に行くのが苦手だったりして、実際に万博には行けない方がいらっしゃったということも聞いておりましたが、そういった方々にとって京都府の身近な場所で万博のレガシーを感じられるような環境整備というものを進めていただけることは非常にうれしく思いますので、ぜひ広報のほうもより一層の御尽力を賜りますようによろしくお願いを申し上げます。
 そして、先日、知恩院さんのほうに行ってまいりまして、そこには大阪・関西万博のアイルランド館に展示をされていた「Magnus RINN(マグナス リン)」というモニュメントが現在展示をされております。これは高さ6メートルの黄金色のモニュメントなんですけれども、テーマとしては「アイルランドと日本の文化的対話」といった思いが込められておりまして、知恩院さんの持つ静けさであったり、京都府の文化というものとアイルランドのモニュメントが非常に融合していて大変すばらしいなと思ったところでございますので、ぜひそういった京都の寺社仏閣と大阪・関西万博の融合というものもぜひ、併せて発信をお願いしたいなというふうに思っております。
 次の質問に入ります。
 質問の最後に、防災・減災教育の強化と次世代の防災リーダー育成について伺います。
 近年、日本では災害が日常化し、地震、豪雨、土砂災害が同時多発する複合災害の時代に突入しています。
 こうした状況の中、本年9月に国の地震調査委員会は、南海トラフ地震の発生確率について、新たな知見を踏まえた計算方法の見直しを行いました。これまで南海トラフ地震は、過去の地震規模や発生間隔などを基に、今後30年以内に80%程度とされてきましたが、新たなモデルでは60~90%程度以上、また発生間隔のみを用いたBPTモデルでは20~50%と算出されました。いずれにおいても、危険度の最も高いIIIランクに分類されることに変わりはありません。
 国は、今回の見直しを踏まえ、「疑わしいときは行動せよ」という原則の下、「60~90%程度以上を前提に備えよ」と、国民や自治体に強く求めています。つまり、計算方法は変わっても、南海トラフ地震が高い確率で発生するという根本評価は、揺らぐどころか、より鮮明になったと言えます。
 こうした状況を踏まえ、京都府として府民の命をどのように守るのかを改めて確認する必要があります。そして、今回は子どもたちと密接に関わる教育現場とどう連携していくのかという視点から防災・減災教育について質問をさせていただきます。
 国において本年3月に南海トラフ地震の被害想定が見直されました。京都府では、最も被害が大きくなるとされる時間帯は「冬の夕方」と位置づけられ、最大で約1,600人が死亡し、約6万4,000棟が全壊・焼失するという大変厳しい見通しが示されています。これらの被害想定は、建物の耐震化や無電柱化など、ハード整備を進めてきた上での推計ですが、同時に、その瞬間にどのような行動を取るかが被害を大きく左右するという重要な前提があります。
 発災時において、子どもが必ずしも大人と一緒にいるとは限らないという現代の生活実態が災害対応を考える上で重要な視点であることが示されたと言えます。そして、この課題は、特定の地域だけに限らず、京都府においても同様です。共働き家庭の増加、放課後の過ごし方の多様化、子どもの単独行動の増加など、社会構造の変化により、子どもだけで災害に直面する可能性は確実に高まっています。だからこそ、子どもたち一人一人が自分の命を自分で守る力を身につけられる教育を京都府としてどう再構築していくのかが今まさに問われています。
 本年の京都府総合防災訓練では、宮津市の府立海洋高校が主会場となり、約40名の生徒が負傷者役などで参加されました。オンライン中継を拝見し、若い世代が実践的な訓練に関わる意義を強く感じたところです。
 また、これまで、京都府と教育委員会で連携し、デジタルハンドブックなどの教材の整備、「防災教育プログラム」の提供、教職員研修、出前語らいなど、多岐にわたるソフト面の取組を積み重ねてこられました。こうした努力に敬意を表するとともに、社会の変化や子どもを取り巻く環境を踏まえれば、防災・減災教育のさらなる深化が必要であると考えています。
 全国的には、防災教育は、知識を教える段階から、実践的な行動科学に基づいた「行動につながる防災教育」へと大きく進化しています。危険を察知し、自ら判断し、行動できる力こそが命を守る力であり、近年の災害でもその重要性が繰り返し示されています。
 そこでまず、全国的に重視されている「行動につながる防災教育」について、京都府として学校現場でどのように推進されているのか、現在の取組状況をお聞かせください。
 災害時には子どもたちが周囲の人々の命を救った事例が全国で報告されています。倒れる棚から弟を守った小学生、避難を促した中学生、高齢者を支えた高校生など、若い力が多くの命を救いました。これは偶然ではなく、日頃の教育・体験・価値感が生む力であると考えています。一方で、地域では労働人口の減少が進み、災害時の避難所設営や物資搬送、運営補助など、従来であれば大人だけで担ってきた作業が十分に回らない可能性が指摘されています。だからこそ高校生が「自分たちも地域の防災を支える主体である」という意識を持ち、避難所設営や運営の基礎を学ぶことは、未来の京都の防災力を底上げする上で極めて重要な投資であると考えます。
 全国でも、若者を対象とした災害ボランティア育成や避難所運営を疑似体験できる避難所運営ゲームなど、次世代を地域防災の担い手として育てる取組が広がっています。京都府においても、こうした次世代育成を防災教育の柱の一つとして体系的に位置づけていく必要があると考えます。
 そこで伺います。
 次世代の防災リーダー育成をどのように位置づけ、京都府教育委員会としてどのような教育活動に取り組もうとされているのか、お聞かせください。
 また、災害発生後の学校の心の安全を守る視点についても伺います。
 災害後、子どもたちは大きな不安やストレスに直面し、学校そのものが被害を受ける場合もあります。今年度整備が進められている「京都府災害時学校支援チーム(D-EST(ディーエスト)京都)」は、学校運営の支援に加えて、子どもたちが安心していつもの学校を取り戻すための心のケアとなる仕組みであると受け止めています。
 そこで、D-EST(ディーエスト)京都の現在の整備状況と、災害後における子どもの学びと心の安全をどのように支えていく仕組みとして展開されていくのか、府の見解を伺います。
 よろしくお願いいたします。

◯教育長(前川明範君) 

◯議長(荒巻隆三君) 前川教育長。
   〔教育長前川明範君登壇〕

◯教育長(前川明範君) 田中志歩議員の御質問にお答えいたします。
 防災教育についてでございます。
 地震、豪雨をはじめとする自然災害は、いつ、どこで、どのような形で起こるか分からないことから、「非常時と平時はつながっている」という認識を持ち、大人がいない状況でも子どもたち一人一人が自ら考え行動し、命を守る力を身につけさせる防災教育が重要であると考えております。
 府教育委員会では、「学校における安全教育の手引」を作成し、災害発生時に教職員や児童生徒がどのように行動するべきかを示すとともに、発達段階に応じた防災教育を主体的な行動につなげる言葉として「わかる」「助かる」「みんなで助かる」をキーワードに推進しているところでございます。各校では、この「安全教育の手引」を基に、地域特有の課題に対応したマニュアルを作成し、例えば、予告なしの避難訓練を実施するなど、災害時を意識した取組を進めております。
 次に、次世代の防災リーダーについてでございます。
 生徒自らが地域の防災力に貢献する意識を持ち、将来的に地域の防災を支える主体となれるよう、より実践的な行動につなげる取組が重要であると考えております。そのため、府立高校生を対象にした京都府公園公社の「災害時模擬体験事業」では、2年間で延べ500名以上が参加し、避難所での率先した活動につながるよう、救助運搬や段ボールベッドの組立て、非常食調理を含む宿泊体験等を行っているところでございます。さらに、危機管理部と連携して作成いたしました「防災教育プログラム」は防災や減災に関する授業等で活用できる指導例が示されており、西城陽高校や久御山高校では、地域の地理的な条件を踏まえた最適な避難経路の検討や避難所のレイアウトの考案など、実践的な学習を進めております。
 府教育委員会といたしましては、学校内外にかかわらず、児童生徒が自ら安全を確保できるよう、市町教育委員会や学校を対象とした防災研修において、地域と連携した避難訓練や地震体験VR等を活用した好事例を共有し、防災教育の充実を図るとともに、次世代の防災リーダーを育む取組が府内各校へ広がるよう、努めてまいります。
 次に、「京都府災害時学校支援チーム」についてでございます。
 大規模災害が発生した際に、子どもたちの命を守ることはもちろんのこと、教育活動の再開や学びの継続、また児童生徒の心のケアなどは教育に携わる私たちに課せられた大きな使命であると考えております。そのため、被災した学校へ教職員等を派遣する京都府災害時学校支援チーム「D-EST(ディーエスト)京都」を本年4月1日に創設し、研修を受講した教職員など、約90名を去る11月20日にチーム員として任命いたしました。
 また、能登半島地震での教育支援を通じて、被災した子どもたちにとって学校が友達や先生と触れ合える場であり、救いや希望となる心の居場所であることを再認識いたしました。災害時、早期に通常の学校生活を取り戻すことは児童生徒の心のケアにつながるため、研修では、チーム員が子どもたちの災害による不安やストレスに寄り添うための資質・能力の向上を目的に、臨床心理士会や日本赤十字社と連携して、「リラクセーション方法の体験」や「災害時のストレス反応の現れ方」などの講座も取り入れたところでございます。
 このような専門的知識の習得に加え、任命されたチーム員には今後、より実践的な能力を身につけるための継続的な訓練を行いながら、当初目標としておりました200名以上の体制を速やかに構築し、いつ起こるか分からない災害の発生に備え、「D-EST(ディーエスト)京都」の体制の充実を図っていきたいと考えております。
 府教育委員会といたしましては、国や各都道府県との広域的な連携を一層強化するとともに、市町教育委員会や関係部局などの理解と協力を得ながら、被災地の教育活動の早期再開を支援する「D-EST(ディーエスト)京都」の活動の充実に平時から取り組んでまいります。

◯田中志歩君

◯議長(荒巻隆三君) 田中志歩議員。
   〔田中志歩君登壇〕

◯田中志歩君 御答弁いただきまして、ありがとうございました。
 災害から実際に命を守るのは、その瞬間の判断力と行動力、そして災害後に子どもの心と学びを守るのは教育の力だと考えております。子どもたちが自分の命を自分で守れる力を身につけられるように、そして災害後には子どもたちの心と学びを守る仕組み、この2つの守りを京都府として力強く進めていただくことを今後も御期待しております。
 以上で質問は終わりますが、最後に1点要望をさせていただきます。
 長引く物価高騰、特に食料品の高騰が続き、府民生活への影響が拡大する中で、食べ盛りの子どもがいる子育て世帯にとっては、食材の購入を控えることで栄養バランスに不安が生じたり、親の食事を減らして対応する方、そして、年金など、収入が限られている高齢者の中には、日々の買物が十分にできず、万引きに走ってしまう方もいらっしゃるとも聞きます。何らかの支援を速やかに講じることが必要であることは、知事や府議会の多くの皆様と共通した認識であると考えます。
 このような状況の中、現在、政府から国会に提出され、審議されている補正予算案には、「総合経済対策」の柱として、各自治体が自由に使い道を決められる重点支援地方交付金の2兆円の拡充が盛り込まれ、そのうち4,000億円を食料品価格高騰対策用とすることとされています。国会の審議によることは十分に承知をいたしておりますが、府民生活の現状を考えますと、国の補正予算が成立すれば、速やかに対策が講じられることが求められると考えます。
 一方で、この食料品価格高騰対策分は市町村に交付され、市町村における実施が主だとお聞きする中ではありますが、年末年始を厳しい物価高騰の中で過ごす方々にとって、いつ、どのような支援が届くのかを知ることも大変重要で、支援策に期待をされている方も多いですので、ぜひ府としても速やかに食料品価格高騰対策が府民の元に届くよう、必要な働きかけや府民の皆様へのお知らせを含めて取り組んでいただくよう求めまして、私の代表質問を終わらせていただきます。
 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)